コロナ禍で見えた行政広報の重要性。行政広報力の徹底強化を!【元京都市会議員 村山祥栄】

コロナ禍で見えた行政広報の重要性。行政広報力の徹底強化を!【元京都市会議員 村山祥栄】
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村山祥栄

大正大学客員教授、元京都市会議員

村山祥栄

とてつもなく重要な行政の広報活動!

行政にとって市民の満足度を高めることは非常に重要な要素であることは言うまでもないが、市民の満足度は行政の取り組みに比例するとは限らない。
今回のコロナ禍で全国的に大変高い評価を受けているのは吉村大阪府知事だが、吉村氏が優れていた点は決断と発信だったと私は感じている。リスクを取る政治決断は政治家としての資質だが、特筆すべきはその発信力が大きかった。矢継ぎ早に政策を発表し、メディアがこぞって取り上げる。メディアが取り上げるのは、大都市大阪ということもあるが、それ以上に最初に着手する取り組みが多かったからだ。
私の住む京都市では、「大阪は早いが、京都の対応が遅い」、「何もやってくれない」という不満が渦巻いていたことに対して、行政サイドは「大阪に負けないような同じような施策を打っているのに理解されず大変残念」というようなコメントを発表していた。
つまり、同じ取り組みをしても、しっかり発信が出来ていなければ伝わらないということだ。同時に、同じ予算を投じても広報力不足だと結果は出ないばかりか、市民の満足度は一向に上がらない。
実は、広報はとてつもなく重要な事業なのだ。

行政が行う広報活動のポイント!

製造メーカーも同じで、広報が十分でないと商品は売れない。だからこそ、メーカーは広告宣伝費に莫大な予算を投入する。しかし、行政は具体的な事業に対しては積極的でも、間接的事業である広報事業には余り目を向けてこなかった。しかし、実は中身が仮に脆弱でも広報やブランディングがしっかりしていると満足度は高くなる。
近年、行政広報は目覚ましく発展を遂げつつあり、タレントの有吉さんを起用して爆発的にヒットした行政広報「惜しい!広島県」キャンペーンから、パブリシティー効果を意識した行政広報やメディアミックス、奇をてらった面白紹介動画が続々と登場し、またひこにゃん、くまモン、ふなっしーに触発されたゆるキャラなど様々な企画が登場した。
今さらながら、行政広報の取り組みについて説明をしていきたい。
まず、前提となる広報の考え方だが、PDFをペタッと貼ることで「情報発信しています」アピールをしてと広報完了というスタンスは論外だ。外出時でもアクセスできるリモート体制を構築することが第一(パソコン、スマホの両対応)、事業課ごとのありがちな広報システムから一元化した情報をニーズに合わせてカテゴリ化すること、紙に落として配布できる仕組みをつくること、SNSで災害専用のアカウントを作り発信できる体制を構築するという4つが基本になる。
ターゲットもひとまとめになりがちだが、「住民への広報」と「域外への広報」を明確に分けなけらばならない。また、それにあわせて、ターゲットに合わせて広報紙とSNS、ホームページ、ラジオなど複数媒体を使い分けることが重要になってくる。
行政広報はどうしても公平性を重視したがるが、公平に情報を発信するとインパクトがなくなるという難しさがある。役所ならではの決済スピードの遅さもSNS対策に非常に不利だ。広報媒体の多様化に伴い、広報業務は複雑かつ高度化され、正直素人の手に負えるものではなくなってきた。だからこそ、民間の力が期待される重要な分野になってきているといっていい。

茨城県、福岡県福岡市の好事例から考える。

魅力度3年連続最下位の茨城県は広報戦略室を設置し、部長級の「広報監」職を新設し公募を行った。
広報監には、米半導体大手・インテル出身の取出新吾氏が就任し、県の動画サイト「いばキラTV」は「動画掲載本数・総再生回数・チャンネル登録者数」の3冠を達成、都道府県運営の動画サイトとして国内トップになるなど目覚ましい活躍を見せた。ちなみに、先述の「惜しい広島県」プロジェクトにも、元映画配給会社IMJの代表取締役を務めた樫野孝仁氏を広報監に起用している。
福岡県福岡市では、2017年、LINEと「福岡市における情報発信強化に関する連携協定」締結し、全国に先駆けLINEを活用した情報発信をスタート。LINEをはじめとするSNSツールを駆使した情報発信は功を奏し、今やline@の登録者数は164万人、自治体LINEアカウント全国一位、県下の公式アカウントでも民間を抑え首位、「8割が満足」と高い満足度を獲得するなどLINEが行政広報の主翼を担うことに成功している。欲しい情報だけが届く仕組み作りを構築し、市民が情報を取捨選択できるという優れモノだ。受信設定された情報は「防災:緊急情報」「防災:雨量情報」「防災:PM2.5予測情報」「ごみの日:燃えないごみ」「お知らせ」と続く。こうした成功体験が自治体広報に自信を与え、今やツイッター、LINE、インスタ、YouTube、クックパッド、ブログと多岐にわたるチャンネルを部署ごとに使い分けて発信する広報先進県となっている。

民間のスペシャリストを直接雇用するケースや民間と共同で事業に着手するケースなどやり方は様々だが、いずれにせよ民間で培ったノウハウを大いに生かせる分野であり、民間ノウハウを行政は積極的に活用することを強くお勧めしたい。